ペットの病気図鑑

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【歯瘻(しろう)】頬のくぼみ、もしかして歯髄炎かも?

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文:オタ福

本症例は頬にくぼみができたのに気づき、その経過を記録したものです。
特に歯周病などのお口のトラブルを抱えたペットを飼育されている方は要注意です。

 

【目次】

 

 

【本症例の情報】

動物種:犬
品種:ミニチュア・ダックス
年齢:14歳

症状:左頬にくぼみができた
現疾患:慢性腎臓病、甲状腺機能低下症、白内障、緑内障、胆泥症

【歯髄炎と頬のくぼみ】

『歯髄炎とは』

歯髄炎とは文字通り、歯髄(図1参照)に生じた炎症のことを言い、ほとんどが細菌感染が原因になります。
歯髄とは歯の深部に位置しており、ここで炎症が続き歯髄が壊死してしまうと歯根付近で感染巣ができます。

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【図1】歯と周辺組織の解剖学的名称

 

『くぼみの正体』

この状態が続くと感染巣には膿がたくさん蓄積していきます。この膿を出すため歯瘻(しろう)を作ります。この歯瘻は頬に限らず、歯肉や口の中に作られる場合があります。

歯瘻はできた場所によって呼び方が区別されています。

歯瘻の呼び名
・口腔内(歯肉や粘膜)にできた場合→内歯瘻
・口腔外(頬)にできた場合→外歯瘻

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【図2】病巣と外歯瘻・内歯瘻

 

【くぼみが出てきた時点】

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【写真1】飼い主さんが発見した初期の外歯瘻 

左頬にくぼみが確認されます。病院へ連れて行ったところ抗生剤を処方されたそうです。

 

【くぼみから1ヶ月後】

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【写真2】くぼみ発見から1ヶ月後

穴が大きくなっています。抗生剤を投与した際、腎数値の悪化が見られたため投薬を中止したとのこと。
細菌感染によって炎症が起き、膿が溜まって起こる疾患であるので、可能な限り抗生物質を投与したいのですが、本症例は慢性腎臓病をもつ子であり腎臓の温存が優先されたのでしょう。

【さらに1ヶ月後から現在(半年後)まで】

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【写真3】以前より穴が大きくなり歯瘻が完成している

くぼみ発見時の【写真1】と比較して確かに穴は大きくなっています。発見から半年経った今は穴の大きさは変わらずでこの大きさが持続しているそうです。

 

【口の中はどうなっているのか】

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【写真4】現在の口腔内の様子です(その1)

左の第3~4前臼歯で歯石が重度に蓄積し、歯周病が起こっていることが分かります。
歯周病では炎症によって骨融解という骨を溶かしてしまうことがあります。歯周病の骨融解が長期間続くと鼻腔内に到達するまで、骨を溶かしていきます。
口腔内と鼻腔内が繋がったものを『口腔鼻腔瘻』と呼びます。

 

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【写真5】現在の口腔内の様子です(その2)

頬側の歯肉も若干赤くなって腫れていますね。やはり歯肉炎や歯周炎などの歯周病も併発しているのでしょう。

 

【歯周病の可能性】

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【図3】本症例の病変部位

本症例で写真から推測した病変部位は第3~4前臼歯でした。歯石の重度な蓄積から歯周病の可能性が高いです。歯周病に関しては以下の記事をご参考ください。

www.otahuku8.jp

 

【歯瘻を呈した症例で行うべき治療】

歯瘻が見られた場合、それは歯肉や上顎骨内で炎症・化膿を示唆しています。
ここまでくると抗菌薬などの対症療法でどうこうできるレベルではなく、速やかに感染した歯髄と周辺組織の除去すなわち抜歯を行う必要があります。
抜歯には全身麻酔が必要になります。

本症例では
・高齢(14歳)であること
・慢性腎臓病を持っていること
から全身麻酔下での外科的介入が不可能と判断し、対症療法で様子を見ています。

 

【謝辞 -写真提供者さんのご紹介-】

Aliceさん
ジュディちゃんの飼い主さん
Twitter:

ジュディちゃん

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『Aliceさんのブログ』

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